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SACDサラウンド・レビュー(591) [サラウンド・サウンド・レビュー]

Haydn Late Piano Works.jpg
Haydn
Late Piano Works
CCS SA 26509
Gary Cooper (fortepiano)
録音 2008年11月
Channel Classics

ハイドン: 後期ピアノ作品集
・ピアノ・ソナタ第49番変ホ長調 Hob.XVI-49
・皇帝讃歌「神よ、皇帝を護り給え」による変奏曲ト長調
・ピアノ・ソナタ第48番ハ長調 Hob.XVI-48
・変奏曲ヘ短調 Hob.XVII-6
・ピアノ・ソナタ第52番変ホ長調 Hob.XVI-52

ピアノ・ソナタ第48番Hob.XVI-48の正確な作曲年は不明であるが、1780年にHob. XVI/39までの作品と共に「ソナタ集 第1巻」としてウィーンで出版されたことから、それ以前の作であることがわかっている。このソナタ集はアウエンブルッガー姉妹に献呈されている。第1楽章は、アレグロで始まることが多いソナタの中で、珍しくアンダンテから開始する魅力的な曲。ピアノ・ソナタのみならず、弦楽四重奏曲においても同様な感じを受けるのだけど、ハイドンの緩徐楽章曲はしっとりとした情感に満ち溢れていて、そこにとても心が惹かれる。その後のロンドへの移行も、全体の流れが失なられず、すごくかみ合っている。3楽章から成り、演奏時間は約13分

ピアノ・ソナタ第49番Hob.XVI-49は1789年~1790年にかけて作曲され、ピアニストのマリアンネ・フォン・ゲンツィンガーに捧げられた。軽やかな両端の楽章に挟まれた、第2楽章が際立つ。しっとりとした流れの中、しかし中間の展開部分では感情の発露があり、大きな広がりを生み出す。その後再び曲は戻りつつ、揺れ動く情感が見事に描かれてゆく。3楽章から成り、演奏時間は約22分

ピアノ・ソナタ第52番Hob.XVI-52は、ハイドンのピアノ・ソナタの中で最後期に書かれた作品(1794年作曲、1798年出版)。長年仕えたエステルハージ家を離れた後の、大成功したロンドン訪問など、傑作が多く生まれた時期である。冒頭の旋律が非常に明瞭な線を与える。第2楽章は憂いを含んだ感情が交差し、去来してゆく。そして第3楽章は一転し、気流が一気に上昇する。3つの楽章がそれぞれ非常に違った特徴を持っており、その独立した個性的な楽章がひとつの豊かな曲へと結びつく。3楽章から成り、演奏時間は約18分

皇帝讃歌「神よ、皇帝フランツを守り給え」による変奏曲の旋律は、現在ドイツの国歌として用いられており、弦楽四重奏曲第77番第2楽章にも用いられている。
 
変奏曲ヘ短調 Hob.XVII-6はアンダンテと変奏曲ヘ短調とも呼ばれ、1793年に作曲された。この曲の題名については当初は混乱が見られ、出版社によって「小さなディヴェルティメント」や「ソナタ」ともされていた。ヘ短調の主題が悲痛な響きを持つことから、この曲の作曲には、マリアンネ・フォン・ゲンツィンガー夫人やモーツァルトとの死が関連しているともいわれる。

ゲイリー・クーパー(Gary Cooper)はイギリスのフォルテピアノ、チェンバロ奏者、指揮者、大学教授。チータム音楽学校(Chetham's School of Music)でオルガンとチェンバロを学び、その後オックスフォード大学でオルガンを学び優秀な成績で卒業。バッハとモーツァルトの鍵盤音楽の解釈者として、また、ルネサンス、バロックの古楽の指揮者としても活躍している。また、英国王立ウエールズ音楽学校(Royal Welsh College of Music and Drama)やバーミンガム音楽院 (Birmingham Conservatoire)でチェンバロとフォルテピアノの教授に就いている。
Gary Cooper_4.jpg


ペダルのないフォルテピアノを使用した教会での録音で、残響はけっこう豊だが、その影響をあまり受けていない。ピアノ自体の音は倍音の響きも良く、美しいが、微かであるが周りのノイズを拾っている。使用ピアノはAnonymous,Vienna Ca.1785, Edwin Beunk collection。録音場所はオランダ、デーヴェンター(Deventer)にあるドープスヘヅィンデ教会(Doopsgezinde Kerk)
Vienna Ca.1785.jpg


サラウンド・パフォーマンス  ☆☆
音質                ☆☆☆
チャンネル            5ch

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U3

モーツァルトとハイドンは常に比較されますね。
これほど性格と気質が異なる二人が常に比較され語られるのは何故なのでしょう。
by U3 (2015-10-06 08:55) 

たーちゃん

U3 さま
本ブログに訪問&コメントをいただきありがとうございます。
私自身、モーツァルトとハイドンの比較をあまり考えたことが無かったのですが、モーツァルトが早熟の天才肌に対してハイドンは遅咲きで、おおらかな曲調の印象です。
by たーちゃん (2015-10-06 10:37) 

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