SSブログ

SACDサラウンド・レビュー(794) [サラウンド・サウンド・レビュー]

Dvorak Symphony No.2 Bosch.jpg
Dvorak
Symphony No.2
COV91735
Marcus Bosch/Nuremberg State Philharmonic Orchestra
録音 2017年10月
Coviello Classics


ドヴォルザーク:
交響曲第2番 変ロ長調 Op.4
交響詩「金の紡ぎ車」Op.109

ドヴォルザークの交響曲第2番変ロ長調作品4(B12)は、第1番の完成後の1865年8月1日に着手し10月9日に完成したが、初演のめどはつかず、友人のモルジック・アンガーがスコアを保管した。1887年にドヴォルザークはスコアを返却してもらい冗長さを除く改訂を施した後、1888年3月11日にプラハでアドルフ・チェフ指揮の国民劇場管弦楽団によって初演されている。ただし出版は1959年まで行われず、かつては現在の第7番が「第2番」として出版されていた。ベートーヴェン、シューベルト、ワーグナー、リストらの影響が随所にうかがわれる。4楽章からなり、演奏時間は約50分。

交響詩「金の紡ぎ車」は1896年1月15日から4月25日に作曲された。1896年11月21日にロンドンで初演された。カレル・ヤロミール・エルベンの詩集「花束」に着想を得ており、4曲の交響詩の中では最も長く、冗長との批判もある。このため、ヨゼフ・スークにより改訂されたこともある。ドルニチュカという娘が森の奥の小屋で継母とその実の娘と一緒に住んでいた。狩にやってきた若い王に水を差しだし見初められたドルニチュカは、城に向かう途中、継母らの計略で殺され、その遺骸は森に捨てられる。しかし魔法使いが現れ、再び生き返らせる。魔法使いはドルニチュカに替わって王妃となった継母の娘に金の紡ぎ車を贈る。戦場から戻った王がその糸車で糸を紡ぐように命じ、王妃がそれを回すと、糸車が継母達の悪行を歌う。王はその歌に従って森へ駆けつけ、ドルニチュカと再会して、彼女と結ばれる。演奏時間は約27~28分


マルクス・ボッシュ(Marcus Bosch ,1969年10月~)はドイツの指揮者。ヴィースバーデン歌劇場のカペルマイスター(1996年~2000年)、ザールブリュッケン歌劇場の監督(2000年~2002年)を歴任、2002年~2011年までアーヘン市にあるアーヘン交響楽団、2011/2012年のシーズンからニュルンベルク州立劇場の総音楽監督に就任するなど、着実に未来のドイツ系実力派指揮者の道を歩んでいる。1990年には合唱団ザ・ヴォカペッラ・コーラスを設立した。
Marcus Bosch_10.jpg


ニュルンベルク州立フィルハーモニー(Staatsphilharmonie Nürnberg)はニュルンベルク州立劇場専属のオーケストラで1922 年に現在の形になった。その起源は1377 年に存在記録がある、ニュルンベルク市の楽団にまで起源を遡るといわれ、バイエルン州ではバイエルン州立歌劇場に次ぐ規模を誇る歌劇場専属のオーケストラ。オペラ上演と並行して、年8 回のオーケストラ・コンサートのほか、子供向けコンサートなど多くの企画を提供しており、1988 年にクリスティアン・ティーレマンがドイツ国内最年少で音楽総監督に就任したことでも知られている。2011/2012年のシーズンから2018年まではマルクス・ボッシュ、2018年のシーズンからは女性指揮者のヨアナ・マルヴィッツ(Joana Mallwitz)が音楽監督に就任する。
Staatsphilharmonie Nürnberg_5.jpg


ニュルンベルク、マイスタージンガーハレでのライヴ録音で1ポイントマイクをメインとした収録と思われ、ホールトーンは豊かで、コンサートホールの中ほどで聴く音に近い。聴衆のノイズや拍手は編集で消されている。音場の広がり感はあまり無い。サラウンドスピーカからはアンビエンスな音がメインだが、低めに抑えられている。

サラウンド・パフォーマンス  ☆☆☆☆
音質             ☆☆☆
チャンネル          5ch

nice!(6)  コメント(0) 

SACDサラウンド・レビュー(793) [サラウンド・サウンド・レビュー]

Perspectives 7.jpg
Perspectives 7
BIS2307
Andreas Haefliger(piano)
録音 2017年7月
BIS

アルバン・ベルク:ピアノ・ソナタ Op.1
リスト:2つの伝説 S175/R17 第1曲 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第28番 イ長調 Op.101
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

ピアノ・ソナタ Op.1はアルバン・ベルクが作品番号付きで生前に発表した唯一のピアノ曲である。ベルクのピアノ曲は、他には「自作主題による変奏曲」(1908年)など数曲の小品とピアノ・ソナタの断章が残っているだけである。単一楽章のピアノ・ソナタで、ロ短調を主調とするが、四度音程の堆積からなる和音、半音階技法、全音音階の頻繁な多用によって、調性感は安定しない。伝統的なソナタ形式の枠組みに従い、呈示部、展開部、再現部の三部分から成り立っている反面、ブラームス流およびシェーンベルク流の「発展的変奏の原理」に依拠することで、冒頭の単一の楽想からすべての部分を派生させ、作品の統一感を確保している。恩師アルノルト・シェーンベルクのもとでのいわば卒業制作として、1907年から1908年にかけて作曲された。出版は1911年、初演は1911年4月24日、ウィーンにおいてエッダ・ヴェルンドルフにより行われたが、当時としては以下のように革新的な書法だったことから、聴衆が暴動を起こしたといわれる。この時、弦楽四重奏曲作品3も同時に初演された。演奏時間は約11分

リストの2つの伝説 S.175 は1861年から1863年にかけて、ローマで作曲された2曲から成るピアノ曲。この作品はキリスト教に題材を採ったもので、ローマで心労を味わっていたリストが聖人の堅い信仰心に感銘を受け、アッシジのフランチェスコとパオラのフランチェスコ(英語版)という二人の聖人にまつわる伝説を音化したものである。公開初演は1865年8月29日に、リスト自身の独奏でペシュトにおいて行われた。第1曲は65年、第2曲は1866年に出版され、娘コジマ・フォン・ビューローに献呈された。

アンドレアス・ヘフリガー(Andreas Haefliger,1962年~)は、ドイツ、ベルリン生まれのスイスのピアニスト。父親はテノール歌手であったエルンスト・ヘフリガー。アメリカ、ジュリアード音楽院でハーバート・ステッシンに師事。1988年にニューヨークでデビューした後、欧米の主要なオーケストラの多くと共演してきた。1993年にウィグモア・ホールにおいてロンドン・デビューを果たし、翌1994年にはフィルハーモニア管弦楽団と共演してプロムスに初めて出演した。ルツェルン音楽祭やザルツブルク音楽祭、ウィーン音楽週間にもしばしば出演している。録音活動にも積極的で、モーツァルトやシューマン、ワーグナー、フランク、グバイドゥーリナ、マリナ・ピッチニーニの作品を録音している。
Andreas Haefliger_1.jpg


スタインウェイDによる演奏で、リストの2つの伝説 ではトレモロの高域弦の美しい響きが印象に残った。サラウンドスピーカーからの音はアンビエンスな音も感じられるが、低めに抑えてある。録音はウィーン、コンツェルトハウス、モーツァルトザール

サラウンド・パフォーマンス  ☆☆☆
音質             ☆☆☆☆
チャンネル          5ch

nice!(4)  コメント(0) 

SACDサラウンド・レビュー(792) [サラウンド・サウンド・レビュー]

J.S.bach Harpsichord Concertos Vol.1.jpg
J.S.bach
Harpsichord Concertos Vol.1
CC72773
Fabio Bonizzoni (harpsichord/conductor)
La Risonanza
2017年8月
Challenge Classics


J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲集Vol.1
・チェンバロ協奏曲 第1番ニ短調 BWV1052
・チェンバロ協奏曲 第2番ホ長調 BWV1053
・チェンバロ協奏曲 第4番イ長調 BWV1055
・チェンバロ協奏曲 第5番ヘ短調 BWV1056


ファビオ・ボニッツォーニ(Fabio Bonizzoni,1965年~)はイタリア、ミラノ生まれのチェンバロ奏者、オルガン奏者、指揮者。 1987年から1994年の間ハーグ王立音楽院にてコープマン(Ton Koopman)にバロック・オルガンとチェンバロを師事。イタリア、トラーパニ国立音楽院(Conservatory of Trapani)やスイス、ルガーノのスヴィッツェラ・イタリアーナ音楽院(Conservatorio della Svizzera Italiana of Lugano)にてチェンバロを教えている。
Fabio Bonizzoni_1.jpg


ラ・リゾナンツァ(La Risonanza)は古楽器を用いるイタリアの室内合奏と合唱のグループ。1995年にチェンバロ奏者ファビオ・ボニッツォーニを中心として結成された。主にバロック音楽を演奏する。
La Risonanza_2.jpg



チェンバロがやや前に出たようなミキシングになっており、アンサンブルの音像は奥への広がりを感じられるが、横方向への広がり感は、あまり無い。サラウンドスピーカーからの音はマイクのセッティングを遠目にし、アンビエンスな音を捉えている。収録はイタリア、ジェノヴァ、サン・ドナート教会

サラウンド・パフォーマンス  ☆☆☆☆
音質             ☆☆☆☆
チャンネル          5.1ch

コメント(0) 

SACDサラウンド・レビュー(791) [サラウンド・サウンド・レビュー]

Debussy Centenary.jpg
Debussy Centenary
ARS38240
Vincent Larderet(Piano)
録音 2017年7月
Ars Produktion


ドビュッシー:ピアノ作品集
・映像第1集
・前奏曲集第2集
・聖セバスティアンの殉教 - 交響的断章(V. ラルデルによるピアノ編)(抜粋)

ドビュッシーは全部で4集の「映像」と名付けた作品を作曲しており、第1集と第2集はピアノ曲、第3集は管弦楽曲である。ただし、第3集は単に「管弦楽のための映像」と呼ばれることが多い。この他に、生前には出版されなかったピアノのための1集があり、「忘れられた映像」と呼ばれている。映像 第1集 (Images I)は1904年~05年作曲。初演は1906年3月リカルド・ビニェスによる。映像 第1集 (Images I)は「水に映る影」、「ラモー賛歌」、「動き」の3曲から成り、総演奏時間は約16分。

ドビュッシーの前奏曲集は1909年から10年にかけて書かれた第1集、1910年から13年にかけて作曲された第2集共に12曲から成り、合せて24曲となる。ショパンの前奏曲集を念頭において構成されたと言われており、例えば「版画」や「映像」ではそれぞれの曲に標題が付けられているのに対し、前奏曲集集では各曲の終わりの余白に小さくタイトルが書かれている。これは、各々の曲に対する固定観念に縛られないようにとの、ドビュッシーの配慮である。第2集は作曲が1910年で 出版が1913年で、第1曲「デルフィの舞姫」、第2曲 「ヴェール(帆)」、第3曲「野を渡る風」、第4曲「夕べの大気に漂う音と香り」、第5曲「アナカプリの丘」、第6曲「雪の上の足跡」、第7曲「西風の見たもの」、第8曲 「亜麻色の髪の乙女」、第9曲「とだえたセレナード」、第10曲「沈める寺」、第11曲「パックの踊り」、第12曲「ミンストレル」の12曲から成り、演奏時間は約33分30秒。


ヴァンサン・ラルデル(Vincent Larderet)はフランスのピアニスト。国立リュエル・マルメゾン音楽院(National Conservatory of Music in Rueil Malmaison)にて学び、最優秀技巧賞を受賞。ドイツのリューベック音楽大学(Lübeck’s Musikhochschule)にてピアノをブルーノ・レオナルド・ゲルバー(Bruno-Leonardo Gelber)に師事。同じ時期にバルセロナのマリア・カナルス国際音楽コンクール(Maria Canals in Barcelona)、ラザール・ベルマンが審査員をつとめるイタリアのA.M.A. カラブリア国際ピアノコンクール、フランスのブレスト国際ピアノコンクールなどをはじめとする数々の国際ピアノコンクールに優勝している。また、スイスの若いソリストのための国際オルフェウム財団(International Orpheum Foundation)からも受賞している。
Vincent Larderet_1.jpg


教会での収録の影響か、少しこもったような音だが、映像第1集の第3曲「動き(Mouvment)」では、スタインウエイDの中高域音の繊細なタッチのピアニッシモからフォルテッシモまでの特徴のある響きが印象に残った。サラウンドスピーカーからの音はほぼ直接音。収録場所はドイツ、Wuppertal、kulturzentrum immanuel

サラウンド・パフォーマンス  ☆☆☆
音質             ☆☆☆☆
チャンネル          5.1ch

nice!(3)  コメント(0) 

SACDサラウンド・レビュー(790)

JOHANN GOTTLIEB GOLDBERG Harpsichord Concertos.jpg
Goldberg, Johann Gottlieb
Harpsichord Concertos
MDG9012061
Alina Ratkowska(Cemb)
Goldberg Baroque Ensemble
録音 2017年10月
MDG

バルト海沿岸諸国の音楽シリーズ5
ヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルク:
・チェンバロ協奏曲 ニ短調、
・チェンバロ協奏曲 変ホ長調


ヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルク(Johann Gottlieb Goldberg,1727年3月~1756年4月)は、ポーランド王領プロシアのグダニスクに生まれのドイツのヴィルトゥオーゾハープシコード奏者、オルガニスト、バロック後期から古典派初期にかけての作曲家。おそらくヨハン・ゼバスティアン・バッハの「ゴルトベルク変奏曲」の初演者ではないかと考えられており、曲がその名を冠していることによってよく知られている。


アリナ・ラトコウスカ(Alina Ratkowska, 1976年~)ポーランドのグディニャに生まれのチェンバロ奏者。ワルシャワのフリデリク・ショパン音楽アカデミー(現音楽大学)、バーゼルのスコラ・カントールムにてアンドレア・マルコンに師事。グダンスク工科大学でも学んだ。フリデリク・ショパン音楽大学講師を務め、グダンスクのゴルトベルク音楽祭を創設しその監督に就任。ボローニャで2005年に行われたパオラ・ベルナルディ国際クラヴィチェンバロ・コンクールの優勝者。
Alina Ratkowska_1.jpg


ゴルトベルク・バロック・アンサンブル(Goldberg Baroque Ensemble)はポーランドのグダニスクを拠点とするボーカル・インストゥルメンタル・アンサンブルで、2008年に指揮者を務めたアンドレイ・ニコライ・シャデイコ (Andrzej Mikolaj Szadejko)によって設立された。バロック様式のクラシック音楽をメインとし、グループはアンサンブルとボーカルに分かれており、ボーカルは室内楽の声楽グループで、カペラ・プロジェクトに携わっている。 ゴールドバーグ・バロック・アンサンブルは現在、「グダニスク市音楽遺産」と呼ばれる録音プロジェクトを行っており、コレクションには、ヨハン・セバスチャン・バッハ、ゲオルグ・フィリップ・テレマン、ヨハン・ヤコブ・フロイバーガーなど、グダニスクのカペルマイスターやミュージシャンによる数千もの作曲が含まれている。
Goldberg Baroque Ensemble_2.jpg


Vn×6,Va×2,Vc×1,Cb×1とCembの小編成のアンサンブルでの演奏で、Cembは前に少し出たように定位している。録音レベルは大きめで、低域弦の厚みのある響きが印象に残った。サラウンドスピーカーからの音は直接音とアンビエンスな音が半々。収録場所はポーランド、Kirche der Erhöhung des Heiligen Kreuzes in Nieszawa

サラウンド・パフォーマンス  ☆☆☆☆
音質             ☆☆☆☆
チャンネル          5.1ch(2+2+2方式)

nice!(3)  コメント(0)